地方公務員災害補償基金 福岡県支部
【事例 33】
通勤途上、電車が途絶していたため、自転車に乗り換えようと自宅に引き返す経路上で、交通事故に遭い、負傷した事例(通勤災害該当)
○概要
 被災職員は、被災当日、交通ストにより電車が途絶えている状況であったため、自転車で出勤しようと自宅に引き返していたところ、交通事故に遭い負傷したものである。
 なお、被災職員は、通常電車で通勤しており、勤務公署までの距離は、およそ5kmであり、引き返した経路は合理的なもので、逸脱・中断はなかったものである。
○説明
 本件災害は、以下の理由により、通勤による災害に該当すると認定されたものである。
 地方公務員災害補償法における「通勤」とは、「職員が、勤務のため、住居と勤務場所との間の往復等の移動を、合理的な経路及び方法により行うこと(公務の性質を有するものを除く)」とされ、「勤務のため」とは当該移動が全体としてみて、勤務と密接な関連性をもって行われるものであること、すなわち、移動と勤務との関連性を失わせる要素が介在していないことをいうものである。
 なお、「勤務のため」の移動であると認められるか否かは、出勤については、交通機関の混雑を避ける目的で早目に出勤する場合、通常の出勤時間より遅く住居を出て出勤する場合等についても、原則として「勤務のため」と認められるが、勤務とは関係のない行為をする目的で住居を出た場合等は「勤務のため」とは認められないとされるものである。
 本件においては、被災職員が電車から自転車に乗り換えようと一旦自宅に引き返した行為が、「勤務のため」の移動といえるかどうかが問題になるが、電車での通勤が交通事情から不可能と判断して、自転車による通勤に通勤方法を変えることは、勤務公署までの距離が5km程度であることからも、一般的に考えられ得る合理的なものであり、私的行為のためでなく、あくまで通勤のために一旦自宅に戻ろうとしていたことから、このことをもって、移動と公務との関連性が失われるとは考えられないものである。
 また、被災職員の引き返した経路は合理的なものであり、逸脱・中断もなかったことから、当該移動は、公務と密接な関連を有しているものとして、本件は通勤による災害に該当するものと認められる。

地方公務員災害補償基金 福岡県支部