(1) 地方公務員災害補償制度とは
地方公務員等が公務上の災害又は通勤による災害を受けた場合に、その災害によって生じた損
害を補償し、必要な福祉事業を行うことにより、地方公務員等及びその遺族の生活の安定と福祉
の向上に寄与することを目的としています。
(2) 地方公務員災害補償制度の特色
ア 使用者の無過失責任主義をとります。公務上の災害については、使用者である地方公共団体
等に過失がなくても補償の義務を課しています。
イ 補償は、身体・生命などの「人身損害」に限られます。洋服、眼鏡、車両などの「物件損
害」や慰謝料などの「精神的損害」は、補償の対象となりません。
ウ 補償は、被災職員又はその遺族の請求に基づいて行われます。(請求主義)
(3) 地方公務員災害補償基金
地方公共団体ごとに細分化されていた補償の実施体制について統一的で迅速かつ公正な補償の
実施を確保する目的から、補償の統一的、専門的実施機関として昭和42年に設置され、地方公
共団体に代わって災害補償を行っています。基金の本部は東京都に、支部は各都道府県及び各政
令指定都市に置かれており、公務災害・通勤災害の認定、各種補償の決定や実施といった具体的
な事務処理はそれぞれの支部で行っています。
基金の活動と補償の実施に必要な財源については、各地方公共団体等からの負担金によって賄
われています。
(1) 常勤職員
ア 常勤の地方公務員(一般職、特別職を問わない。)
イ 常勤の一般地方独立行政法人の役職員
(2) その他勤務形態が常勤の地方公務員に準ずる者で政令で定めるもの(令第1条職員)
ア 常勤的非常勤職員
常時勤務に服することを要する地方公務員について定められている勤務時間以上勤務した
日が18日以上ある月が引き続いて12月を超えるに至った者で、引き続き当該勤務時間により
勤務することを要することとされているもの
イ 再任用短時間勤務職員及び任期付短時間勤務職員
地方公務員法第28条の5第1項に基づく職員
適用法令 |
職員区分 |
実施機関 |
地方公務員災害補償法 | 常勤職員、再任用短時間勤務職員、任期付短時間勤務職員、常勤的非常勤職員など | 地方公務員災害補償基金 |
地方公務員災害補償法に基づく条例 | 議会の議員、 行政委員会の委員、附属機関の委員等他の法令の適用を受けない者 | 各地方公共団体 |
労働者災害補償保険法 | 臨時職員、嘱託職員 (労働基準法別表第1に掲げる事業に雇用される者) | 厚生労働省 |
(1) 公務災害の認定の考え方
職員が災害を受け、その災害が公務災害として認められるためには、次の二つの要件を満たす
必要があります。
ア 公務遂行性
職員が公務に従事していること(任命権者の支配下にあること)
イ 公務起因性
災害の発生と公務との間に相当因果関係があること※
(2) 公務起因性の判断
一般的に、「負傷」事案については発生原因が外面的に明らかなため、第一次的な判断とし
て「公務遂行性」が認められれば第二次的な判断である「公務起因性」も認められます。
ただし、次のように公務遂行性が認められる場合でも、公務起因性が認められないために
公務災害とはならない場合がありますので、ご注意ください。
ア 災害性(通常の動作とは異なる動作による急激な力の作用など)が認められない場合
例:公用車を運転中、バックさせるために首を捻って後方を確認中に頸椎を捻挫
例:膝半月板に加齢性の変性がある職員が作業中に膝を床についただけで膝半月板を損傷
イ 偶発的な事故の場合
例:出張でたまたま通りかかった工場の爆発事故に巻き込まれて負傷
ウ 私的怨恨による場合
例:過去の私的なトラブルで恨まれていた知人から勤務中に庁舎内で暴行されて負傷
エ 恣意的行為、私的行為又は業務逸脱行為による場合
例:土木工事の監督・検査業務に従事していた職員が現場にあったショベルカーに個人的
な興味を持って無断で乗り込み、降りる際に転落して負傷
(3) 公務災害の態様と認定の要件
公務災害は、「公務遂行中の負傷」(公務上の負傷)と「公務に起因して発症した疾病」(公
務上の疾病)とに分かれます。
一般的に、「疾病」は種々の原因や条件、本人の素因や基礎疾患などが複雑に絡み合って発症
することから、公務災害に該当するかどうかの調査・審査に多くの時間を要します。
ア 公務上の負傷
公務上の負傷は、災害の発生状況から次のように分類されます。
区 分 |
概 要 |
@ 職務遂行中等の災害 |
職員の本来の担当業務や特命による業務に従事している場合で、次のものも含まれる。 ・地方公務員法の規定に基づく研修、健康診断 ・用便、水飲みや食事のための移動行為 ・勤務時間の前後の清掃、手洗い、更衣などの準備及 び後始末行為 |
A 設備の欠陥等 | 職務遂行中等に該当しないが、災害が勤務場所又はその付属施設の設備の不備や管理上の不注意により発生した場合をいう。 |
B 職務遂行に伴う怨恨 | 職務遂行に伴う怨恨により第三者から加害を受けて負傷した場合で、時間的・場所的関連性が認められれば勤務時間外又は勤務場所外で発生した加害も含まれる。 |
C レクリエーション参加中 | 地方公務員法の規定に基づくレクリエーションの活動中に発生した災害をいう。 |
イ 公務上の疾病
公務上の疾病は、疾病の発症原因から次のように分類されます。
区 分 |
概 要 |
@ 公務上の負傷に起因する疾病 | 公務上の負傷によって直接発生する疾病のほか、既往の私的疾病が公務上の負傷により著しく増悪した場合も含まれる。 |
A 職業病 | 長期にわたって業務に内在する有害因子のばく露を受けて発症した特定の疾病をいう。職業病については、認定基準により有害因子と疾病が具体的に定められている。 |
B その他公務に起因することが明らかな疾病 | 公務に起因して発症したことが明らかな疾病(例:伝染病罹患地域への出張中に当該伝染病に感染した場合など)や、公務と相当因果関係をもって発症したことが明らかな疾病(例:過重労働による脳・心臓疾患、精神疾患など)をいう。 |
(1) 通勤災害の基本的な考え方
通勤災害とは、通勤に起因する災害をいいます。
よって、職員が通勤の経路を逸脱したり、通勤のための移動を途中で中断した場合は、当該逸
脱・中断の最中に発生した災害は通勤災害とは認められません。
また、逸脱・中断の内容や程度によっては、その後に通勤経路に復した場合でも通勤とは認め
られず、逸脱・中断の開始後に発生した災害はすべて通勤災害と認められない場合があります。
(2) 通勤について
通勤とは、職員が、勤務のため、住居と勤務場所との間を、合理的な経路及び方法により往復
することをいい、公務の性質を有するものを除きます。
(3) 通勤の範囲について
職員の移動行為が通勤と認められるためには、次の要件をすべて満たす必要があります。
要 件 |
通勤に該当する例 |
通勤に該当しない例 |
@勤務のため (勤務に就くため又は勤務を終了したことによる往復行為) |
ア 通勤の途中で作業着、定期券など勤務や通勤に関係あるものを忘れたことに気付き、取りに戻る場合 イ 公務災害の対象となるレクリエーションに参加する場合 |
ア 通勤の途中で自己都合により引き返す場合 イ 任意参加の親睦会に参加する場合 ウ 勤務終了後、相当時間にわたり囲碁、将棋等の私用に弁じた後に帰宅する場合 |
A住居 (居住して日常生活の用に供している生活の本拠としての家屋のほか、特別な事情で特に設けられた宿泊場所など) |
ア 家族とともに生活している家 イ 単身赴任者等が毎週末に家族とともに過ごす場合の家族の住居 ウ 交通事情等のために一時宿泊する旅館、ホテル等 |
ア 地方出身者の一時的帰省先 イ 単身赴任者等が年末年始のみ家族とともに過ごす場合の家族の住居 |
B勤務場所 (職務を遂行する場所として、明示又は黙示の指定を受けた場所) |
ア 通常の勤務提供の場所 イ 外勤職員の外勤先 ウ 公務災害の対象となるレクリエーションの場所 |
ア 同僚との懇親会、同僚との送別会の会場 |
C合理的な経路 (社会通念上、一般に用いると認められる経路) |
ア 通勤届による経路 イ 道路工事等当日の交通事情によりやむを得ず迂回する経路 ウ 共稼ぎの職員が子供を託児所に連れて行く経路 |
ア 交通事情によらず、著しく遠回りとなる経路 イ 近道のために柵で囲まれた私有地を無断で通り抜ける場合の経路 ウ 高速道路や鉄橋など歩行が禁止された箇所を歩行する場合の経路 |
D合理的な方法 (社会通念上、一般に用いると認められる方法) |
ア 通常通勤に利用する電車等の公共交通機関 イ 通常通勤に利用する自家用車・自転車等 ウ 通常の通勤どおりの徒歩 |
ア 無免許運転、飲酒運転の場合 イ 通常電車で通勤している職員が所要時間の大幅な増加にもかかわらず、所属に無断で自転車通勤をする場合 |
(4) 通勤の逸脱又は中断について
ア 逸脱・・・通勤とは関係のない目的で合理的な経路からそれること
イ 中断・・・合理的な経路上において、通勤目的から離れた行為を行うこと
逸脱・中断に該当するが、経路に復した後は通勤と認められるもの |
・日用品の購入やそれに準ずる行為 ・病院等での受診 ・選挙の投票 など |
逸脱・中断に該当し、経路に復したとしても通勤とは認められないもの |
・装飾品、耐久消費財等の購入 ・麻雀、パチンコ、観劇、飲酒などの娯楽 ・同僚の送別会や冠婚葬祭への出席 など |
ささいな行為として逸脱・中断に該当しないもの |
・経路上の売店で新聞を買う ・経路上の駅でソバ等を立食する など |
(5) 通勤、退勤の始点について
通勤災害の対象となる通勤経路とは、一般的に不特定多数の者が自由に通行できる場所をい
います。
ア 住居と通勤経路の境界
門や扉が境界となり、一戸建てならば門より外が、マンションならば扉より外の共用の通
路、階段などが通勤経路となります。なお、住居とみなされる場所での負傷は、私傷病とし
て公務災害等の補償対象とはなりません。
イ 勤務場所と通勤経路の境界
勤務公署の敷地内の門等が境界となります。よって、勤務公署の敷地内にある駐車場での
負傷は公務災害となりますが、敷地の外にある駐車場での負傷は通勤災害となります。
(1) 第三者加害事案とは
公務上の災害又は通勤による災害の原因となった事故が、「第三者」の不法行為によって発生
し、「第三者」に損害賠償責任が生じた事案を「第三者加害事案」といいます。
直接災害の原因をなした加害者自身のほか、責任無能力者の監督義務者や加害者の使用者、
動物の占有者、自動車の運行供用者なども第三者となる場合があります。
第三者とは、被災職員が所属する地方公共団体及び地方公務員災害補償基金以外の者です。
第三者加害事案に該当するためには、第三者に民法や自動車損害賠償保障法などの法律に基
づく不法行為責任(損害賠償責任)が発生しなければなりません。
(2) 免責・求償とは
第三者加害事案では、被災職員は第三者に対して損害賠償請求権を有しますので、被災職員
が第三者からの損害賠償と基金からの補償を二重に受けることがないよう、地方公務員災害補
償法で調整のための方法が定められています。
この調整の方法には「免責」と「求償」があり、「免責」を用いた補償の進め方を「示談先
行」、「求償」を用いた補償の進め方を「補償先行」といいます。
ア 免責
被災職員が第三者から損害賠償を受けたときは、基金はその価額の限度において補償の義務
を免れます。(地方公務員災害補償法第59条第2項)
被災職員が第三者から損害賠償を受ける前に基金の補償を受けたときは、基金は補償の価
額の限度において被災職員が第三者に対して有する損害賠償請求権を取得し、第三者に求償
します。(地方公務員災害補償法第59条第1項)
(3) 補償方針について
「示談先行」と「補償先行」のいずれを選択するかについては、法律上の定めはありません。
一般的には、被災職員の過失割合が小さい場合などは、基金が補償できない物的損害や精神的
損害なども含めて賠償金を一括して早期に受領できる「示談先行」の方が適しています。
また、職員の過失割合が大きいために加害者からの賠償金だけでは十分な療養ができない場合
や加害者との連絡が取れないために示談が早期にできない場合などは、療養に要する経費の全額
を基金が先に支給する「補償先行」の方が適しています。
もっとも、「補償先行」の場合でも、被災職員は加害者との示談を可能な限り進め、賠償金の
支払いを求めていく必要があります。加害者との示談が面倒だとか、加害者に賠償請求をしたく
ないなどの理由で「補償先行」を選択することはできません。
公務災害又は通勤災害として認定されると、次のような補償や福祉事業が受けられます。
「補償」とは、使用者としての法的義務として行われる被災職員やその遺族への損失の補てん
をいいます。
しかし、補償だけでは十分に被災職員やその遺族の生活の安定、福祉の維持向上が図れないこ
とから、補償の付加的給付を行うこととしています。これを「福祉事業」といいます。
災害による区分 |
主な補償 |
主な福祉事業 |
負傷・疾病に対するもの |
○療養補償 負傷や疾病が治るまで、診察費・薬剤費・処置料・移送費などが支給されます。 |
|
○休業補償 傷病の療養のため勤務することができず、給与を受けられないときに、その期間1日につき平均給与額の60%に相当する額が支給されます。 |
○休業援護金 休業による給与減等を補うため、休業補償を受ける者に対し、1日につき平均給与額の20%に相当する額が支給されます。 |
|
○傷病補償年金 療養の開始後1年6ヶ月を経過しても傷病が治らず、かつ、障害の程度が傷病等級に該当する場合には、年金が支給されます。 |
○傷病特別支給金 傷病補償年金の受給権者に対し、見舞金の趣旨で傷病等級の区分に応じて一定額が支給されます。 ○傷病特別給付金 傷病補償年金の受給権者に対し、期末手当等の特別給を給付に反映させる趣旨で年金として給付されます。 ○補装具 一定の要件を満たした傷病補償年金の受給権者に対し、補装具のうち車いす・電動車いす・床ずれ防止用敷布団・介助用リフター及びギャッチベッドが給付されます。 ○奨学援護金・就労保育援護金 傷病補償年金の受給権者(平均給与額が16,000円以下である場合に限る)に対し、学資や保育費の支弁を援護する趣旨で一定額が支給されます。 ○介護人の派遣 傷病補償年金の受給権者であって居宅において介護を要する者に対し、基金の指定する事業者からの介護人の派遣又は必要な費用の支給がなされます。 |
|
○介護補償 傷病等級第2級以上の年金受給権者で常時又は随時介護を要する状態である者に対し、一定額を限度に支給されます。 |
||
障害に対するもの |
○障害補償(年金・一時金) 傷病が治ったときに障害等級に該当する障害が残った場合は、その等級に応じて年金又は一時金が支給されます。 |
○障害特別支給金 障害補償の受給権者に対し、見舞金の趣旨で障害等級の区分に応じて一定額が支給されます。 ○障害特別給付金 障害補償年金・一時金の受給権者に対し、期末手当等の特別給を給付に反映させる趣旨で年金・一時金として支給されます。 ○障害特別援護金 障害補償の受給権者に対し、生活を援護する趣旨で障害等級の区分に応じて一定額が支給されます。 ○外科後処置 障害等級に該当する程度の障害が存する者に対し、義肢装着のための再手術、義眼の装かんなど特に必要と認められる処置について処置の実施又は必要な費用が支給されます。 ○リハビリテーション 障害等級に該当する程度の障害が存する者に対し、社会復帰のための機能訓練や職業訓練などについて、訓練の実施又は必要な費用が支給されます。 ○アフターケア 外傷により脳の器質的損傷を受けた者や特定の傷病により障害等級に該当する程度の障害が存する者など、治ゆ後においても環境等の変化により症状が動揺する者に対し、原則として一定期間に限り、診察、処 置、看護等の実施又は必要な費用が支給されます。 なお、眼疾患や大腿骨頸部骨折など特定の傷病にあっては、障害等級に該当しなくても医学上特に必要が認められる場合はアフターケアが支給されます。 ○補装具 障害等級に該当する程度の障害が存する者に対し、義肢・装具・義眼・補聴器・車いす等の補装具が給付されます。 ○奨学援護金・就労保育援護金 障害補償年金の受給権者(第1級から第3級に該当し、かつ、平均給与額が16,000円以下である場合に限る)に対し、学資や保育費の支弁を援護する趣旨で一定額が支給されます。 ○介護人の派遣 障害等級第3級以上の障害補償年金の受給権者であって居宅において介護を要する者に対し、基金の指定する事業者からの介護人の派遣又は必要な費用の支給がなされます。 |
○介護補償 障害等級第2級以上の年金受給権者で、常時又は随時介護を要する状態である者に対し、一定額を限度に支給されます。 |
||
死亡に対するもの |
○遺族補償(年金・一時金) 職員が公務又は通勤により死亡した場合に、その遺族等に対し年金又は一時金が支給されます。 |
○遺族特別支給金 遺族補償の受給権者に対し、弔慰・見舞金の趣旨で受給権者の区分に応じて一定額が支給されます。 ○遺族特別給付金 遺族補償年金・一時金の受給権者に対し、期末手当等の特別給を給付に反映させる趣旨で年金・一時金として支給されます。 ○遺族特別援護金 遺族補償の受給権者に対し、一時的出費を援護する趣旨で受給権者の区分に応じて一定額が支給されます。 ○奨学援護金・就労保育援護金 遺族補償年金の受給権者(平均給与額が16,000円以下である場合に限る)に対し、学資や保育費の支弁を援護する趣旨で一定額が支給されます。 ○長期家族介護者援護金 脊髄等の障害で常に介護を要していた傷病・障害補償年金の受給者が年金受給開始後10年を経過して死亡した場合に一定の遺族に一時金が支給されます。 |
○葬祭補償 |
(1) 補償請求権の消滅時効
補償を受ける権利は、その権利が発生した日(補償事由発生日)の翌日から起算して次の表の
期間内に認定請求を行なわないときは、時効によって消滅します。(地方公務員災害補償法第63
条)
補償の種類 |
補償事由発生日 |
時効期間 |
療養補償 | 療養の費用の支払義務が確定した日 |
2年 |
休業補償 | 療養のため勤務することができず、給与を受けない日 |
2年 |
障害補償 | 負傷又は疾病が治った日 |
5年 |
介護補償 | 介護を受けた日の属する月の末日 |
2年 |
遺族補償 | 職員が死亡した日 |
5年 |
葬祭補償 | 職員が死亡した日 |
2年 |
〔時効完成後に公務・通勤災害と認定された場合の特例〕
上記の時効期間が満了する前に公務・通勤災害の「認定請求」を行えば、消滅時効の完成
後に公務・通勤災害と認定された場合でも、認定の事実を知ることが可能となった日(通常
は認定通知が到達した日)の翌日から起算して上記の時効期間が満了するまでは補償を受け
ることができます。
(2) 認定請求の消滅時効
認定請求自体には消滅時効の定めがありませんが、補償を受ける権利が時効により消滅した後
に認定請求を行った場合は、公務・通勤災害と認定されても時効により消滅した部分の補償は受
けることができません。
なお、災害が発生してから長期間が経過すると事実関係の確認が困難となることから、認定請
求書は原則として被災後2ヶ月以内に基金福岡県支部に到達するように提出してください。
(1) 故意の犯罪行為又は重大な過失による災害とは
職員が業務中に故意に「災害」を発生させて負傷しても、公務起因性がないために公務災害と
は認められません。
しかし、職員が故意に「犯罪行為」を行ったことや「重大な過失」を犯したことが原因で結果
として災害が発生した場合には、公務遂行性など他の要件を満たせば公務災害と認められます。
例えば、公用車を運転中、故意に対向車両に衝突させて負傷しても公務災害とは認められませ
んが、急いでいたために法定速度を大幅に超えた運転を故意に行ったり、同乗者との会話に夢中
で脇見を繰り返して対向車両と衝突して負傷したときは、公務災害と認められる場合があります。
なお、これらのことは、通勤災害でも同様です。
(2) 補償の制限
被災した職員に故意の犯罪行為や重大な過失が認められる場合や正当な理由がなくて療養に関
する指示に従わない場合は、療養を開始したときから3年間に限り、休業補償、予後補償、傷病
補償年金及び障害補償について30%に相当する額が減額されることがあります。
これは、過失相殺的な考えに基づいて基金の補償責任の一部を免除することにより、災害の防
止について職員の注意を喚起する効果を考慮したものです。
なお、療養補償や遺族補償については一切減額されませんので、被災した職員に故意の犯罪行
為や重大な過失が認められる場合でも職員の療養やその遺族の生活には何ら影響はありません。