地方公務員災害補償基金 福岡県支部
【事例 30】
給食調理員が、盆の入ったかごを運搬していたところ、「右肩腱板損傷」を生じた事例(公務外)
○概要
 小学校の給食調理員である被災職員(女性・43歳)は、手洗いによるお盆の洗浄と消毒の途中、クラス毎のお盆を入れたお盆かご(重量約10kg)を食器棚に移す作業をしていたが、何回か運んだ時、突然右肩に激痛が走り、そのまま業務を終えたが、その夜も痛みがあったため、翌日病院を受診したところ、「右肩腱板損傷」と診断されたものである。
○説明
 本件災害は、以下の理由により、公務外の災害と認定されたものである。
 地方公務員災害補償制度において、災害が公務上の災害と認められるためには、職員が公務に従事し、任命権者の支配管理下にある状況で災害が生じたこと(公務遂行性)を前提として、公務と負傷、公務と疾病との間に相当因果関係があること(公務起因性)が要件とされている。
 医学経験則上、「肩腱板損傷」は、手に重量物を持って急に持ち上げたり、転倒した際に手をついて肩を捻ったりした場合に、肩を支える腱が損傷を受けるものであり、また、スポーツや仕事による肩の腱の酷使や老化のために腱に変性が生じている場合には、日常の些細な動作で生じることもあるとされている。
 本件については、MRI検査が実施されていないため、腱板の変性の有無は明らかではないが、災害発生状況をみると、クラス毎のお盆を入れたお盆かご(重量約10kg)を食器棚に移す作業を何回か行っていた際に右肩に激痛が走ったとされており、特に肩を支える腱に損傷を与えるほどの急激な動きをしたものとは認められない。
 また、本人の職務である調理業務は、右肩の腱を酷使させるものとは認められない。
 以上のことから、本件災害は、公務との間に相当因果関係が認められないため、公務上の災害とは認められない。

地方公務員災害補償基金 福岡県支部