地方公務員災害補償基金 福岡県支部
【事例 29】
左膝を地面に付けて修理作業を行っていたところ、「左膝内障、左膝内側半月板損傷」を生じた事例(公務外)
○概要
 衛生センター技師である被災職員(男性・46歳)は、同僚とともに排水ポンプの分解修理を行い、左膝を地面に付けて右膝を立てた姿勢で、モーターの羽根車(重量約20kg)を持ち上げたり転がしたりした時に左膝に異常を感じ、立ち上がったところ、激痛が走った。本人は、作業中に左膝に重量がかかっているのを感じていたが、左膝に物がぶつかるようなことはなかった。翌日に病院で診察を受けたところ「左膝内障」と診断され、その後転医した病院で膝関節鏡検査を受けた結果、「左膝内側半月板損傷」と診断され、左膝内側半月板部分切除術を受けたものである。
○説明
 本件災害は、以下の理由により、公務外の災害と認定されたものである。
 地方公務員災害補償制度において、災害が公務上の災害と認められるためには、職員が公務に従事し、任命権者の支配管理下にある状況で災害が生じたこと(公務遂行性)を前提として、公務と負傷、公務と疾病との間に相当因果関係があること(公務起因性)が要件とされている。
 本件は、「左膝内障、左膝内側半月板損傷」について認定請求なされたものであるが、「膝内障」とは、膝関節になんらかの障害があり、正確に診断できない場合の包括的名称であり、本件では、膝関節鏡検査によって障害の原因が特定されていることから、より正確な疾病名である「左膝内側半月板損傷」について検討することとなる。
 医学経験則上、膝半月板は、膝が強く捻られるようなことがなければ損傷することはないと考えられている。
 本件については、X線写真及びMRIからは、年齢相応の加齢性変化が認められるのみで、明らかな異常は認められず、また、膝関節鏡検査で認められた半月版の細線維化及び外側の脛骨関節面の軟骨摩耗等の変性は、長期間にわたって形成されるものであって、今回の動作によって生じたものとは認められない。
 本件の受傷状況をみると、左膝を地面に付けた姿勢で作業を行っており、膝は固定されているため捻られてはおらず、また、膝に物がぶつかったとの事実も認められないことから、排水ポンプの分解修理作業中に、半月板を損傷させるに足る外力が膝に加わったとは認められないので、公務と「左膝内側半月板損傷」との間に相当因果関係は認められない。
 以上のことから、本件災害は、公務上の負傷による疾病とは認められない。

地方公務員災害補償基金 福岡県支部