地方公務員災害補償基金 福岡県支部
【事例 28】
消防車から重量80kgのホースカーを2人で降ろそうとしたところ、相手方とタイミングが合わず、本人に荷重がかかり腰痛を発症した事例(急性症状に限定して公務上)
○概要
 消防士である被災職員(男性・23歳)は、消防車の機械器具点検整備を行うため、消防車最後部に積載してある鉄製のホースカー(重量80kg)を同僚職員と二人で消防車から降ろそうとしたところ、両者のタイミングが合わず荷重が本人の方に片寄り、腰部に激痛を感じた。
 その後、痛みが治まらないため、翌々日に医師の診察を受け、「腰椎椎間板障害」の診断を受けたものである。本人は、初診後、牽引・硬膜外ブロック等の通院治療を続け、最終通院日は、被災から約5ヶ月となっている。
 なお、本人の申立てによると、素因・基礎疾患及び既往歴はなしとされている。
 また、主治医の所見によると、X線及びMRIから腰椎第4/第5間に椎間板の狭小化が認められる。さらに、専門医の所見によると、X線写真から第1、第2第3腰椎にシュモール結節が認められ、MRI画像から腰椎第4/第5間に椎間板の変性と軽度の膨隆が認められる。これらの変化は、災害発生時に生じたものではなく、災害発生以前から存したものと認められる。
○説明
 本件災害は、以下の理由により、急性症状に限定して、公務上の災害と認定されたものである。
 本件に係る専門医の医学的所見によると、X線写真から第1、第2第3腰椎にシュモール結節が認められ、MRI画像から腰椎第4/第5間に椎間板の変性と軽度の膨隆が認められる。これらの変化は、災害発生時に生じたものではなく、災害発生以前から存したものと認められる。
 災害発生状況をみると、本人は消防車最後部に積載してある鉄製のホースカー(重量80kg)を同僚職員と二人で消防車から降ろそうとしたところ、両者のタイミングが合わず荷重が本人の方に片寄ったものであるが、取り扱ったホースカーの重量は、80kgと重く、本人が全く予期していないときに突然当該重量が本人の腰部に負荷されたものであることから、本人の腰部に対して瞬間的に著しく大きな負担がかかったものと認められ、当該動作が本人の基礎疾患を急激に著しく増悪させ、腰痛等の症状を生じたものと認められる。よって、本件腰痛等の症状は、公務が相対的に有力な原因となって発症したものと認められることから、「公務に起因することが明らかな疾病」(公務と相当因果関係をもって発生したことが明らかな疾病)と認められる。
 ただし、公務との相当因果関係が認められるのは、急激に著しく増悪した部分としての急性症状に限定されるものであることから、公務上の療養期間は急性症状の消退まで(療養等の状況から総合的に判断して、最終通院日まで)に限定される。

地方公務員災害補償基金 福岡県支部