地方公務員災害補償基金 福岡県支部
【事例 22】
HCV抗体陽性患者に使用した注射針を誤って刺傷し、その後、C型慢性肝炎を生じた事例(公務上)
○概要
 看護師である被災職員は、勤務中、HCV抗体陽性患者に使用した注射針を誤って手に刺傷し、公務災害の認定を受けた。なお、被災直後の血液検査では、HCV抗体陰性であった。災害6か月後の経過観察での血液検査において、HCV抗体陽性と判明し、さらに精密検査でHCV−RNA抗体陽性となり、肝生検で「C型慢性肝炎(慢性活動性肝炎)」と診断され、インターフェロンの投与を受けているものである。
 なお、本人に肝疾患・輸血の経歴はなく、親族はいずれもC型肝炎ウィルス抗体陰性で肝機能は正常である。
○説明
 本件災害は、以下の理由により、公務上の災害と認定されたものである。
 被災職員は、被災後の経過観察による血液検査により、HCV抗体陽性、HCV−RNA抗体陽性と認められ、さらに、肝生検を行った結果、慢性活動性肝炎と診断されたものである。
 本件疾病の感染経路については、針刺し事故によるものと断定できるものではないが、被災直後の血液検査により、HCV抗体陰性であったことから、針刺し事故以前には、感染していなかったことが明確である。
 さらに、被災職員は肝疾患・輸血の既往がなく、家族にもHCV患者はないことなどから、公務以外の事実による感染の可能性も認められない。
 したがって、針刺し事故によってHCVウイルスに感染した蓋然性は高いと認められ、被災職員は公務に従事したことによってHCVに感染したと推認するのが相当であり、「公務に起因することが明らかな疾病」と認められる。

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